安心チームガイド

チームの心理的安全性を客観的に測る:リーダーのためのチェックリスト活用実践ガイド

Tags: 心理的安全性, リーダーシップ, チームビルディング, チェックリスト, 現状把握

チームの心理的安全性を「見える化」する意義

チームの心理的安全性は、メンバーが率直に意見を述べたり、質問したり、ミスを認めたりできる雰囲気のことです。この心理的安全性が高いチームは、学習能力が高く、変化への適応力があり、結果として高い成果を出しやすいことが多くの研究で示されています。

特に新任リーダーの方の中には、「チームメンバーの本音が聞けているか分からない」「チームの雰囲気がどうも硬い気がする」といった課題を感じている方もいらっしゃるかもしれません。心理的安全性は目に見えにくい概念であるため、その現状を客観的に把握することは容易ではありません。

そこで有効なツールの一つが、「心理的安全性チェックリスト」です。チェックリストを活用することで、チームの心理状態をある程度数値化・可視化し、現状を客観的に把握する手がかりを得ることができます。これは、漠然とした不安や感覚に頼るのではなく、具体的なデータに基づいてチームの状態を理解し、改善策を検討するための第一歩となります。

心理的安全性チェックリストとは

心理的安全性チェックリストは、チームメンバーがチームの雰囲気や相互作用について、いくつかの質問項目に回答する形式のツールです。メンバーは各質問に対して、例えば「全くそう思わない」から「非常にそう思う」までの尺度(例:5段階評価)で回答します。

このチェックリストを通じて、チーム全体の心理的安全性のレベルや、特定の領域(例:意見表明のしやすさ、助け合いの文化、失敗への許容度)における課題を浮き彫りにすることができます。

エドモンドソン博士が提唱する心理的安全性の4つの領域(話しやすさ、助け合い、挑戦、新奇)に関連する質問や、具体的な行動に関する質問を含めることが一般的です。

チェックリスト作成のポイント

効果的な心理的安全性チェックリストを作成するためには、以下の点に注意しましょう。

質問項目例:

以下は、チェックリストに含めることができる質問項目の例です。(これらをそのまま使う必要はなく、チームの状況に合わせて調整してください。)

  1. チーム内で、他の人が納得しないかもしれない意見でも躊躇なく言うことができる。
  2. もしミスをしても、チーム内でとがめられる心配はない。
  3. チームのメンバーは、困っているときに助け合っている。
  4. チームのメンバーは、私のユニークなスキルや才能を評価し、活用している。
  5. チームで新しいことに挑戦する際、失敗を恐れずに試すことができる。
  6. チーム内で質問をしたり、疑問点を述べたりしても、無知だと思われる心配はない。
  7. チーム内で困難な問題について話し合う際、率直に意見を交換できる。
  8. このチームで働く中で、自分らしくいられると感じる。

チェックリストの活用方法

チェックリストを作成したら、次にどのように活用するかが重要です。単に実施するだけでなく、結果をチームの改善につなげるためのステップを踏みましょう。

  1. 実施方法を検討する:

    • 匿名性を確保する: メンバーが本音で回答できるよう、匿名での回答を強く推奨します。Google Formsなどのツールを使えば、簡単に匿名回答形式で実施できます。
    • 実施頻度を決める: 半年に一度、または四半期に一度など、定期的に実施することで、チームの状態の変化を追跡できます。
    • 目的を共有する: なぜこのチェックリストに回答をお願いするのか、その目的(チームの状態をより良くするため、など)をメンバーに明確に伝えます。
  2. 結果を集計・分析する:

    • 各質問項目の平均点や分布などを集計します。
    • 特に点数が低い項目や、回答のばらつきが大きい項目に注目します。ばらつきが大きい場合、特定のメンバーやグループで状況が異なる可能性が示唆されます。
    • 全体的な傾向や、前回実施した場合の変化などを確認します。
  3. 結果をチームに共有し、対話を行う:

    • 集計結果をチームメンバーにフィードバックします。この際、個人の回答が特定されないように配慮が必要です。
    • 結果を受けて、チームで率直な対話を行います。「なぜこの項目の点数が低いのか?」「どのような状況でそう感じたのか?」などを話し合います。リーダーは結果を一方的に解説するのではなく、メンバーの意見や感じたことを引き出す姿勢が大切です。
    • この対話自体が、心理的安全性を高める機会となります。
  4. 改善策を検討・実行する:

    • 対話で明らかになった課題に基づき、具体的な改善策をチームで検討します。「〇〇について、今後□□のようにしてみよう」「△△の場面では、リーダーとしてXXな働きかけを意識する」など、実行可能なアクションに落とし込みます。
    • 実行した改善策の効果を、その後のチェックリストの結果やチームの様子を通じて確認します。

チェックリスト活用の注意点

結論:チェックリストは対話と行動のきっかけ

心理的安全性チェックリストは、チームの目に見えにくい状態を数値化し、客観的な事実として捉えるための有効な手段です。特に心理的安全性の醸成に不慣れな新任リーダーにとって、どこに課題があるのか、どのような改善が必要なのかを考える上での良い出発点となります。

しかし、チェックリストの真価は、その結果を受けたチームでの対話と、そこから生まれる具体的な行動にあります。結果を共有し、メンバーと共に考え、小さなことからでも改善を積み重ねていくプロセスそのものが、チームの心理的安全性を着実に高めていくことにつながります。

ぜひ、あなたのチームでも心理的安全性チェックリストの活用を検討してみてください。