安心チームガイド

メンバーの不安や懸念にどう向き合うか:心理的安全性を高めるリーダーの実践ガイド

Tags: 心理的安全性, リーダーシップ, コミュニケーション, チームビルディング, 不安対応

はじめに:なぜメンバーの不安や懸念に向き合うことが重要なのか

チームを率いる上で、メンバーが業務やチーム環境に対して様々な不安や懸念を抱えていることがあります。これらの感情は、表面化しないまま放置されると、パフォーマンスの低下、チームワークの悪化、最悪の場合、メンバーの離職につながる可能性もございます。

新任リーダーの皆様の中には、「メンバーの本音が聞けない」「何を考えているか分からない」といった課題をお感じの方もいらっしゃるかもしれません。メンバーが不安や懸念を率直に表現できる状態、つまり心理的安全性が高い状態を築くことは、これらの課題を解決し、チームを健全に運営していく上で不可欠です。

この記事では、チームメンバーが抱える不安や懸念のサインに気づき、それに適切に向き合い、心理的安全性を高めるための具体的な実践方法をご紹介いたします。

不安や懸念が表面化しない背景:心理的なハードルを理解する

メンバーが不安や懸念をリーダーに直接伝えにくい背景には、いくつかの心理的なハードルが存在します。

これらのハードルを理解することが、メンバーが安心して話せる雰囲気を作る第一歩となります。心理的安全性が低いチームでは、これらの恐れや諦めがより強固になり、メンバーは本音を隠すようになります。

不安や懸念の「サイン」に気づくための観察ポイント

メンバーは、言葉で直接「不安です」「困っています」と伝えない場合でも、様々なサインを発していることがあります。日頃からメンバーをよく観察し、これらのサインに気づく感度を高めることが大切です。

観察すべき具体的なポイント:

これらのサインはあくまで一例であり、個々のメンバーによって現れ方は異なります。日頃からメンバーとの良好なコミュニケーションを心がけ、それぞれの「いつもと違う」状態に気づけるように意識することが重要です。

不安や懸念に寄り添い、話を聞くための具体的アプローチ

サインに気づいたり、メンバーが話しかけてきたりした際に、どのように対応すればメンバーは安心して話せるでしょうか。心理的安全性を高めるための具体的なコミュニケーションスキルをご紹介します。

1. 話しやすい雰囲気を作る

2. 安心感を与える言葉を選ぶ

具体的な声かけの例:

3. オープンな質問を活用する

「はい」「いいえ」で答えられるクローズドな質問ではなく、メンバーが自分の状況や気持ちを詳しく話せるようなオープンな質問を使います。

オープンな質問の例:

共に解決策を考え、必要なサポートにつなげるステップ

メンバーが不安や懸念を話してくれた後、リーダーとしてどのように対応すべきでしょうか。すぐに解決策を提示するのではなく、共に考える姿勢が重要です。

  1. 状況の確認と整理: メンバーの話を聞いて、問題の状況、メンバーの感情、具体的な影響などを整理します。必要であれば、「つまり、〇〇ということでしょうか?」と確認します。
  2. 期待のすり合わせ: メンバーが今回の話に何を期待しているのか(ただ聞いてほしいのか、アドバイスがほしいのか、具体的な行動を求めているのか)を確認します。
  3. 解決策の共創: メンバーと一緒に、どのような解決策があり得るかを考えます。「どうすればこの状況が少しでも良くなると思いますか?」「何か試してみたいアイデアはありますか?」などと問いかけ、メンバー自身の考えを引き出します。リーダーとして提供できる情報やリソースがあれば伝えます。
  4. ネクストステップの決定: 合意した解決策や試してみることを明確にし、誰がいつまでに何をするのか、具体的な行動計画を立てます。
  5. フォローアップ: 一度話を聞いて終わりではなく、その後どうなったか、状況に変化はあったかなどを定期的にフォローアップします。これは、メンバーの話を真剣に受け止めているというメッセージになり、信頼関係をより強固にします。

一人で対応が難しい問題(ハラスメント、メンタルヘルスに関わる深刻な問題など)については、速やかに人事部門や産業医など、適切な専門部署や関係者に相談し、連携して対応することが必須です。メンバーには、必要に応じて関係部署と連携すること、ただしその際もプライバシーに配慮することを誠実に伝えます。

日常的な心理的安全性の醸成が不安軽減につながる

メンバーが「このチームなら、このリーダーになら安心して話せる」と感じられるようになるためには、特別な機会だけでなく、日頃からの心理的安全性の醸成が不可欠です。

これらの日々の積み重ねが、メンバーが不安や懸念を一人で抱え込まず、「チームに頼ろう」「リーダーに相談してみよう」と思える土壌を育みます。

まとめ:安心できる場所としてのチームを作るために

チームメンバーが抱える不安や懸念に向き合うことは、心理的安全性を高め、ひいてはチームのパフォーマンス向上、メンバーのエンゲージメント強化につながるリーダーの重要な役割です。

そのためには、メンバーが出すサインに気づく感度を高め、彼らが安心して話せる傾聴の姿勢と共感的なコミュニケーションを身につけることが第一歩です。そして、問題を共に考え、必要なサポートを提供する具体的なステップを踏むことが求められます。

最も大切なのは、日頃から心理的安全性を意識したチーム運営を行い、「ここは安心して自分の気持ちや考えを話せる場所だ」とメンバーが心から感じられる関係性を築いていくことです。

この記事でご紹介した実践方法が、皆様が安心できる強いチームを築いていくための一助となれば幸いです。